そいつはミノーにガツンと噛みつき、タックル全体をはじいて逃げて行ってしまった。
手に残るしびれは久しぶりの感覚だ。
最近の僕は魚が釣れても歓喜の雄叫びをあげることがない。
それは小さな川や温和な川で、優しい魚たちを相手に釣りをしているからだと今日気づいた。
同じサイズの魚でも、うねるような流れにすむヤツは筋肉の鍛え方が違う。
獲物をくわえるだけでなく、引きちぎるようにひったくる荒々しさ。
僕がベイトフィッシュだったら、あんな魚に食われるのは恐怖である。
さらなる快感を求めて釣り上がる。
落石がひどく、林道は車両通行禁止だ。
普段は釣り人でにぎわう早戸川だが、車が入れない今は閑散としている。
先行者らしき足跡も見当たらない。
やがて落ち込みのある中規模なプールを見つけてミノーを流す。
沈み石の上を通過した所でゴン!とロッドが引かれる。
水面を激しく暴れながら僕の足元にやって来たのは15センチの小さなヤマメだった。
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