堰堤の上から熊鈴が聞こえる。
アングラーが2名、川を下ってきたのだ。
フィッシングジャケットに身を包み、まるで雑誌から出てきたような二枚目釣り師。
「どうですか?」と声をかけられたが、僕は尻が痛いのだ。
とりあえず下を見てくれとばかりに足元を指差した。
「おぉ!」
彼は、後からくるもう一人のアングラーに向かって「やっぱりこのクラスばかりだなぁ!」と叫んだ。
このクラスばかりとはどういうことか。
僕にとっては大物、それにさっき「おぉ!」と驚いたではないか。
「どの辺まで行かれましたか?」と聞くと
「かなり上まで行ったよ」とのこと。
「川沿いに登山道があるんですよ」という僕のアドバイスに、
「知ってるよ」ときた。
そこから先をひたすら釣り上がるがコツリともこない。
彼らの濡れた足跡が河原の石に貼りついている。
しかし落胆はよくない。
先行者がいたって竿抜けポイントは必ず見つかる。
ある浅瀬で魚影が動いた。
上流の流れ込みに向かってキャストすると小ヤマメが釣れた。
次に中クラスが2尾、同じ淵から飛び出した。
普通、同じポイントに一度トレースしたら二度目に食ってくる可能性は低い。
かなりウブなヤマメたちだ。
4度目には20センチオーバーが釣れた。
昔の日本はどの川もこんな感じだったのだろう。
この国で一番最初にルアー釣りを始めた人間はさぞかし笑いが止まらなかったに違いない。
足跡だらけの唐沢川で、この流れ込みだけは楽園だった。
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